雨にうたれた
痕跡がのこっている
あなた、という呼び声が
そのアパートの
扉が
暗くかすんでいくように
聞こえるのと同じ
重さで
青くそめる
目を覆う
雨
*
あなた、と呼ばれた
そう呼ばれ、足跡をのこした
六月の影が
か細い
六月には
飛ばない
鳥が描かれていた
骨格に
表情はない
晴れた日の空は
青い
*
なぜ
というひとことが
わたしたちの結末に
位置するとき
夜
と呼ばれつづけた
その声をきいた
女は
眠りながら燃えていた
日の目をみても
目は覚めない
*
それが
混乱をまねくのなら
まねかれたものたちは
いま踊っているのか
目は雨に
青く、口語的に
それはうなだれている
季節の
変わり目に
まねかれたものたち
走る馬たちの群れが
いま氷のようだ
*
つま弾かれたいくつかが
午後に立ちのぼる
影に暗く
空は青く
息している
歴史のひとこまに
私たちはいた
間引かれればまた芽吹き
それは青く
立ちのぼっている
窓に
私たちの顔がみえた日
*
夕べみた
夢の陰影をとどめた
けさの一面は白く
ひらかれて
青い
草を刈り
焼きはらう
手のひらもまた白いのなら
海だけはまだ青い
坂道をくだり
いつか見た風景を
また見た