散文詩#1(遠い日の)

2008/05/14
@mimei_maudet
Journal : 2022/03/20



    雨にうたれた
    痕跡がのこっている
    あなた、という呼び声が
    そのアパートの
    扉が
    暗くかすんでいくように
    聞こえるのと同じ
    重さで
    青くそめる
    目を覆う
    雨

    *

    あなた、と呼ばれた
    そう呼ばれ、足跡をのこした
    六月の影が
    か細い

    六月には
    飛ばない
    鳥が描かれていた

    骨格に
    表情はない

    晴れた日の空は
    青い

    *

    なぜ
    というひとことが
    わたしたちの結末に
    位置するとき

    夜
    と呼ばれつづけた
    その声をきいた

    女は
    眠りながら燃えていた

    日の目をみても
    目は覚めない

    *

    それが
    混乱をまねくのなら
    まねかれたものたちは
    いま踊っているのか

    目は雨に
    青く、口語的に
    それはうなだれている

    季節の
    変わり目に
    まねかれたものたち

    走る馬たちの群れが
    いま氷のようだ

    *

    つま弾かれたいくつかが
    午後に立ちのぼる
    影に暗く
    空は青く
    息している

    歴史のひとこまに
    私たちはいた

    間引かれればまた芽吹き
    それは青く
    立ちのぼっている

    窓に
    私たちの顔がみえた日

    *

    夕べみた
    夢の陰影をとどめた
    けさの一面は白く
    ひらかれて
    青い

    草を刈り
    焼きはらう
    手のひらもまた白いのなら
    海だけはまだ青い

    坂道をくだり
    いつか見た風景を
    また見た